2027年の法人セキュリティの市場規模は1兆3,000億円と予想。今、企業に求められるセキュリティとは?

DXの加速やコロナ禍によるテレワークの普及などを受けて、法人向けのセキュリティ市場が活発化しています。市場規模は2027年に1兆3,000億円に達するとの予測もあり、国内のセキュリティ市場の動向に注目が集まっています。

今回は、法人向けセキュリティの市場規模や、これから企業に求められるセキュリティのあり方について解説します。

本稿は、今日の10分セキュリティラジオの放送を加筆修正したものです。

法人向けセキュリティの市場規模は2027年に1兆3,000億円に到達すると予想

野村総合研究所では2021年12月17日、2027年度までのICT(情報通信技術)とメディアに関連するデバイス、ネットワーク、コンテンツ配信、xTech(B2C)、xTech(B2B)の主要5市場に関する市場動向や予測を発表しました。

同発表によると、2020年のセキュリティ市場規模は約1兆259億円。2027年には約1兆2,770億円に達すると予測されており、国内におけるセキュリティ市場の成長がうかがえます。

背景にあるのが、企業のDX化やコロナ禍によるテレワークの導入。これ以外にも、5G端末の普及やクッキーレス時代へ向けての対応など、セキュリティ対策がより重要視される場面は急速に拡大しています。

法人向けセキュリティ市場予測、2027年1兆3,000億円(ScanNetSecurity)

今後必要とされるセキュリティ対策はエンドポイントやクラウド関連

では、今後のセキュリティ対策ではどのような分野が必要とされるのでしょうか?とくに注目しておきたいのが、エンドポイントやクラウド関連です。

リモートワークや在宅勤務がサイバー攻撃の標的に

コロナ禍によるリモートワークや在宅勤務が急速に拡大する中、エンドポイント(※1)やクラウドがサイバー攻撃の標的となる事例が増えています。

※1:エンドポイントとは、通信ネットワークの末端に接続された機器のことを意味します。ここでは、リモートワークや在宅勤務で社員が自宅に持ち帰ったPCやスマホといった端末を指します。

企業はこうしたセキュリティリスクへの対策を強化していく必要があります。

まず、エンドポイントへの対策としてEDRが挙げられます。EDRとは、Endpoint Detection and Responseの略で、日本語では「エンドポイントでの検知と対策」と訳すことができます。ユーザーが利用するパソコンやサーバー(=エンドポイント)での不審な挙動を検知し、対策を施すことを意味します。

また、クラウドへのセキュリティ対策としてCSPMが挙げられます。Cloud Security Posture Managementの略で、主にクラウドサービスの設定ミスを管理する仕組みです。

2022年も引き続きエンドポイントやクラウドを標的とした攻撃は増加すると予想されることから、企業でもEDRやCSPMを活用した対策を講じていきましょう。

法人向けセキュリティではサスティナブルなセキュリティ対策が必要に

さて、今後法人向けセキュリティ市場では、サスティナブル(持続可能)なセキュリティ対策が必要となってきます。理由として、社会課題として挙げられるサプライチェーンリスクを少しでも解消することが最優先課題であるためです。

サプライチェーンリスクを解決するためにセキュリティの“格差”をなくす

サプライチェーンリスクとは、関連企業のマルウェア感染やソフトウエアの脆弱性によるインシデントなど、サプライチェーン全体に潜在するリスクのことです。DX化や情報化社会の拡大により、サプライチェーンに関するセキュリティリスクの脅威は身近なものとなってきました。

こうしたサプライチェーンリスクが発生する要因として人・技術・お金に関わるセキュリティの“格差”があります。一部の優秀なホワイトハッカーに依存したセキュリティ対策や、資金的に余裕のある企業や個人だけが強固なセキュリティで守られる状態は、セキュリティの“格差”と呼べ、解決しなくてはならない課題です。

セキュリティの標準化や仕組化、無償でのセキュリティサービスの提供など、全員参加のセキュリティ対策=サスティナブルなセキュリティ対策が今後いっそう求められていくでしょう。

まとめ

法人セキュリティは2027年に市場規模が1兆3,000億円に達すると予想されています。DXの加速やコロナ禍によるライフスタイルの変化、5Gをはじめとした情報技術の発展など、企業や個人がセキュリティ対策を「自分事」として考える必要に迫られています。

特に、近年の社会課題として挙げられるサプライチェーンリスクを解消するためには、セキュリティの格差をなくし、誰でも安心を享受できるサスティナブルなセキュリティ対策が求められていくでしょう。