アミュプラザが街の魅力を取り戻すきっかけに|Talk 前編|株式会社JR宮崎シティ黒川氏

2020年11月20日にグランドオープンした「アミュプラザみやざき」。JR九州グループと自治体、地域事業者がタッグを組んで取り組んだこの事業は、中心市街地の空洞化が課題とされる宮崎において、街の魅力を取り戻す起爆剤になると期待されています。


今回は、アミュプラザみやざきを運営する株式会社JR宮崎シティの黒川哲代表取締役をお招きして、アミュプラザの開業に至った経緯や今後への期待についてお話を伺います(以下敬称略)。

藤崎(クラフ代表取締役):JR九州グループではアミュプラザをはじめとした新規事業に積極的に取り組まれていますが、その背景からお聞かせいただけますか?

黒川:JR九州民営分割時は中長期での事業を検討する段階で、今後鉄道事業が右肩上がりで推移していくことは難しいと考えていました。そこで、将来性が見込める新規事業の展開が必要だったのですが、その最右翼となったのが駅ビル事業でした。

これまで築いてきた駅というネットワークを有効に活用しながら、駅の構内や周辺で商業展開をしていく。とはいえ、スタート当初はノウハウがない状態でしたので、まず「えきマチ」をはじめとした小型の開発事業から取り組み、徐々に規模を拡大していきました。

1998年に小倉駅でアミュプラザ小倉をオープンしたのをきっかけに事業を本格化し、その後は長崎、鹿児島、博多、大分と展開し今回の「アミュプラザみやざき」の開業に至りました。

藤崎:2021年には新熊本でのオープンも控えていると伺いました。

黒川:はい。2021年の4月に開業を予定しています。それから、今後は九州新幹線長崎ルートの開業を見越して、長崎でもアミュプラザ級の新しい駅ビルの開発を予定して計画を進めています。

藤崎:アミュプラザみやざきの開業、JR宮交ツインビル設立の経緯についてもお聞きしたいのですが、宮崎で事業に取り組まれた印象はいかがでしたか?

黒川:私たちも時代のニーズに合わせて事業も変化・進化させて来たのですが、今回の宮崎での取り組みで特徴的だったのは地域の事業者や自治体との共同事業として取り組んだ点です。計画当初からミッションの1つとして中心市街地の回遊性向上と活性化を掲げ、それを意識しながらプランを作っていきました。

例えば、大手量販店がショッピングモールを展開する場合は、事前にフォーマットが決まっていて、そこにマッチする土地を探していきます。しかしアミュプラザは駅立地のため、地域によってフォーマットを柔軟に変化させなければなりません。その街の強みや特色をしっかり汲み取る作業が重要ですが、宮崎では地域の方とタッグを組んで取り組むことができたので、その部分が計画を進める上で大きな強みになりました。

藤崎:なるほどですね、宮崎の皆さんのお人柄や県民性はいかがでしたか?

黒川:とても親切な方が多いなという印象でした。地域の魅力を取り戻し、街を一緒に盛り上げようという気持ちを強く感じましたね。コロナ禍という難しい状況の中でも、事業者や自治体が積極的に動いてくれました。アミュプラザのオープンに合わせて、イベントや事業を展開してくれるなど、ご意見や励ましの声をたくさんいただきました。

藤崎:私自身も宮崎で生まれ育った人間なのですが、宮崎は車社会だと言われています。今回のアミュプラザの事業では地域の回遊性向上もミッションの1つだとお聞かせいただきましたが、課題解決への見通しや今後への期待についてはいかがでしょうか?

黒川:宮崎に限らず、地方では車が移動手段として定着しています。計画を進める段階でも、地域の方からそうしたお声はいただきました。ただ、私たちも実際に街へ足を運び、イベントなどへも参加したのですが、決して「街を歩くポテンシャル」が低い訳ではないという印象でした。街を楽しむ文化というのはまだまだしっかり息づいていて、それをもう一度活性化してあげるきっかけが必要なのではと。

アミュプラザみやざきが、そうしたきっかけとなり、街の魅力を再発見することに繋がればと考えています。

藤崎:アミュプラザみやざきが街に足を運ぶ動機になるということですね。

黒川:そのとおりです。これまでは中心市街地から駅へ向かう動機となり得る、シンボル的な存在がありませんでした。しかし、あみーろーどや若草通りを歩いてみると、魅力的で地域を盛り上げようと頑張っているお店がたくさんあります。実は街の魅力というのは、こうしたお店の歴史や背景がエッセンスとなって、紡がれていくものだと思っています。

アミュプラザみやざきがきっかけとなり、街に足を運ぶ人が魅力あるお店を訪れてくれる。そこでの体験が日常となり、サードプレイスのような場所へと発展していく。そうした変化が生まれれば、ライフスタイルの中に「街を歩く」という選択肢が生まれてきます。

今後は、オフィスが多い高千穂通りにも動機となり得るようなお店やスポットが現れれば、さらに回遊性が高まるのではないでしょうか。博多では、「はかた駅前通り」の活性化がきっかけとなり、キャナルシティと博多シティ間の魅力を取り戻しました。これから宮崎が同じような成功事例となる期待を、私たちも強く持っています。

黒川氏のお話を伺っていると、アミュプラザみやざきのオープンはJR九州グループだけでなく、地域や自治体との連携が事業推進への大きな役割を果たしたことが分かります。それだけ、地域事業者や自治体が「街の魅力を取り戻す」というミッションに強い意気込みを持っていた裏返しでもあります。


次回の対談後編では、JR宮交ツインビルの10階にオフィス移転したクラフ(KRAF)にスポットを当てて、移転へ至った経緯や今後の展望についてご紹介します。