”社会を良くする”認証制度 | B Corp 認証企業対談 |ダノンジャパン 大楠絵里子氏 | 前編
クラフは、2023年9月に、 社会や環境に配慮した公益性の高い企業に対する国際認証「B Corporation(以下B Corp)」 を取得しました。
日本でもB Market Builder Japanが立ち上げられ、B Corpムーブメントの輪が広がる中、 クラフでは同じくB Corp認証を取得している企業と対談を行いました。 今回は、ダノンジャパン株式会社コーポレートアフェアーズ本部長の大楠絵里子氏とクラフ代表取締役の藤崎の対談です。
ー社会に対する考え方
大楠(以下敬称略):当社は、「世界中のより多くの人々に、食を通じて健康をお届けする」というミッションのもと、120カ国以上で製品を展開し、55カ国で社員が働いています。
ビジョンには「One Planet. One Health」を掲げていて、チルド乳製品や植物性食品、水などの食品・飲料を世界へ届けています。日本では、40年以上前から事業展開をしています。
当社のサステナビリティへの考え方の原点となるのが、1972年に初代CEOアントワーヌ・リブーが「社会の発展なくして、企業の成功はない」と話したスピーチです。
このスピーチでは、自社の製品に対する責任は、製品が製造され工場を出たところで終わるのではなく、その先にもあるという点が印象的でした。
当時は売上重視の会社も多く、「売上が上がれば良い」「利益が出れば良い」という世の中だったと思いますが、当時から社会への影響を考えていた会社としての姿勢が、今も受け継がれていると感じます。
また、私たちは2015年にB Corp運動に参加しています。もともと持っていたサステナビリティへの考え方、掲げているビジョンやミッションがB Corp認証と親和性があることから、日本でも2020年5月に、大手消費財メーカーそして⾷品業界で初めて、B Corp認証を取得しています。
藤崎:当社では、「安心を提供する会社で在り続ける」を企業理念に、サイバーセキュリティ事業を幅広く展開しています。
もともと地方でこのサイバーセキュリティのビジネスを通しながら未経験者をIT人材に育成することを両立させるなど極めて社会企業寄りの考え方で創業した会社なのですが、7年目となった現在は150名体制となり、主軸であるセキュリティ(脆弱性)診断の事業では国内トップが見えてきています。
会社として社会に与える影響力が少しずつ増していくにあたり、改めて自社の在り方や社会にできること、良いことは何なのかを改めてよく考えるようになりました。
社会にとって良いことに取り組む企業について調べていく中で、国際認証B Corpについて知りました。ガバナンス・環境・従業員など柱ごとに自社の取り組みが点数として可視化されるので、現在の自社の位置を客観的に知るのに良いのではと、認証取得に向け動き出しました。同じサステナブルな考え方・価値観を持つ認証企業のコミュニティに参加したいという想いもありました。
また、認証取得と並行して、社会課題や他社の取り組みについて理解を深めようと社外での勉強会などを探しているところで、ダノンジャパンの皆さんにご助言・アテンドしていただいたというご縁もありました。ありがとうございます。
大楠:実は対談のお話をいただいた時、IT企業でB Corp認証を取得している企業は、社会にどのようにコミットしているのかとても興味がありました。
未経験者を含めて、企業にとって大切な「人材の育成」という観点から、地元への想いを大切にしながら社会へ貢献されているんですね。素晴らしいと思います。
ー社会への使命について
大楠:当社がビジョンに掲げている「One Planet. One Health」は2017年に設定されました。入社前から気になっていたものの、その真の意味が分かったのは入社してからでした。
健康的な食事をしないと健康にはなれませんよね。健康的な食事を担保するためには、健康な食物を作る必要があります。そのためには、地球が健康でなければいけない。全てが揃って初めて、人々に健康な食事を提供できます。
当社の製品は食に関わるもの。「世界中のより多くの人々に、食を通じて健康をお届けする」というミッションを達成するためにも、1つしかない地球の健康を大切に守っていく必要があります。この想いが2015年のB Corp運動参画に繋がり、2017年にはビジョンの設定に繋がったと考えています。
今ヨーロッパ諸国では、会社の価値を評価する際に、環境の面でどのような貢献ができているかが1つの軸となります。環境への貢献が会社の価値に顕著に繋がる点は、日本との大きな違いかもしれません。
こうした社会の流れもあり、ダノンは全てのグループ会社が2025年までにB Corp認証を取得することを目標に、一層の社会へのコミットを図っています。
藤崎:会社の価値に関わるという考え方は、たしかにまだ日本では浸透していないように感じます。
一方、ダノンジャパンでは昨年B Corp再認証も取得されていますね。いち早く社会へコミットする姿勢・活動が評価されているのではないでしょうか。
ー地域の文化・特性に合わせた活動と意義
大楠:ダノンジャパンでは、2022年9月に「One Planet. One Health For YOU」というグループ全体のビジョンにならった日本向けのビジョンの展開をスタートしています。
グローバルな動きに加え、地域の文化・特性に合わせた形で活動する。これが再認証の際に、ガバナンスの点で評価されました。
”One Planet”の部分では、特に日本において問題となっている食品ロスの課題に取り組んでいます。”One Health”の部分では、人生100年時代といわれる現代において、消費者の皆さんが直面しているさまざまな課題に対して、健康的な製品を提供することで寄与しています。
藤崎:早くから取り組みをされてきたことはもちろん、時代の流れに合わせて取り組みも進化しているところが素晴らしいですね。
大楠:昨年の再認証時には、2020年に初めて認証を取得した時に比べて点数があがりました。これは、社員の皆さんが課題に一つひとつ向き合い、改善に向けて取組んできた結果だと思います。
一方で、「点数をあげることが全てではない」という想いもあります。点数はあがりましたが、あくまで自社のビジネスをより良くすることを目的に真摯に活動してきた結果だと考えています。
時代が変われば求められるものも変わりますので、B Corp取得や再認証取得に向けて取組むことは、社会における自社の現在置を確かめる良い機会になります。良いものは続け、課題として見えたことに対しては、いかに真剣に向き合い改善し続けることができるかが大切ではないでしょうか。
ESGに関する活動はつい「投資対効果」という軸で見られがちですが、B Corp認証取得のプロセスで得られるもっと大切なことにも目を向けるべきだと思います。
グローバルな視点も交えながら、社会へのアクションが会社そのものの価値に繋がると話す大楠氏。
認証取得は通過点であり、あくまで自社のビジネスをより良くしていくこと、新たな課題に日々向き合っていくことが大切と話す両者の熱い想いが見られました。
後編では、現在の課題や今後について対談します。