B Corporation認証取得から1年、改めて認証までの歩みを振り返る

クラフは、2023年9月に国際認証「B Corporation」(以下=B Corp)を取得しました。
事業を通じて地域社会、環境などあらゆるステークホルダーにBenefit(利益)を生む取り組みを行う企業が認証を受けるB Corp。

クラフは、IT業界未経験者の積極的な採用・育成を地元・宮崎県で展開する取り組みが評価され、宮崎で初、また国内セキュリティ企業でも初となる認証に至りました。

2024年9月で認証から1年。認証取得に向けたプロジェクトチームを管掌した村上の話から、B Corp認証までの歩みを振り返ります。

※B Corp認証についてはこちら

ー改めて、B Corpとはどのような認証制度でしょうか。

村上:「B Corp」(B Corporationの略)は、アメリカの非営利団体B Labが運営している国際認証です。地域や社会、環境に配慮し社会に良いインパクトを与える取り組みをしている企業を認証する仕組みで、商品だけでなく企業のあり方自体が評価されます。この認証は厳しい基準をクリアした企業に与えられ、B Corp認証企業には、社会や環境への配慮、透明性、説明責任などが求められます。

全世界で8,000社以上が認証を受けていますが、日本ではわずか40社ほど。B Corp認証を取得することにより、社会貢献活動における信頼性を高めることができ、社会に対して良い影響を与える企業としての価値を向上できます。

ーB Corp取得を目指したきっかけは。

村上:クラフがB Corpを取得しようと思ったきっかけは、2022年の6月ごろでした。セキュリティを用いた社会課題解決プロジェクト「S4(エスフォー)※」の世界展開を見据える中で、社会課題に取り組み、ビジネスとしても成功している企業に注目しました。環境負荷を極力削減した製造過程を経て製品を提供している企業など、事業と社会課題解決の両立を実現している企業について調べてみると、B Corp認証企業という共通点があることに気付きました。

一方、製造業でこのような取り組みをしている企業は多く見られますが、セキュリティ業界には、世界を見渡しても事業と社会課題解決を両輪で推進している企業がごくわずかであることにも気付きました。

セキュリティの社会課題解決を図るS4プロジェクトや創業当初から取り組んでいる未経験者のIT人材への育成など、前例のないことにチャレンジしようとしているクラフの取り組みは、国際的に見て、社会にとってどのように映るのか。またB Corpコミュニティに参加することで、良い企業と一緒により良い社会を目指し、社会課題解決を一層のパワーで推進していきたい。このような想いで認証取得への歩みをスタートさせました。

※「S4(エスフォー)」についてはこちら

ー認証取得までのプロセスを教えてください。

村上:当時はB Corpに関する日本語での公式情報は限られていて、英語の情報に対応しながら手探りで情報収集を進めました。その結果、認証取得までのプロセスは以下の7段階となっていること、一定の点数を超えると認証を取得できることが分かりました。

B Corp認証までの流れ
(1)申請(B Impact Assessment Answering & Submission)
(2)評価待ち(Evaluation Queue)
(3)評価(Evaluation)
(4)検証待ち(Verification Queue)
(5)検証(Verification)
(6)改善(Improvement [Only if Needed] )
(7)検証後(Post-Verification)

まずは取得に必要な情報を整理し、クラフの取り組みを振り返りました。

クラフは(1)の申請にあたりAssesmentの内容確認を社内で行った段階で、認証に必要な最低点を大きく上回っており、取得の可能性を感じていました。

しかし、実際の審査では追加質問や説明が求められることがあり、それに対応するために資料をまとめる必要がありました。テキストや資料ベースで審査員とのやり取りを重ね、さらにその後Web会議で審査員からの質問に回答、さらに追加資料の提出というプロセスを1年ほど繰り返し、最終的に2023年の9月に認証を取得することができました。取得までの道のりは長く、困難な部分もありましたが、経営陣や人事、管理部門、広報といった部門の垣根を超えたチームの協力によって、地方発の情報セキュリティ企業が国際認証B Corpを取得するという過去に例を見ない取り組みに成功しました。

ーB Corp認証を目指す際、業界や商材による影響はありましたか。

村上:業界や商材を問わずB Corpを目指すことはできますが、商材や業界の性質が影響を与えることはあります。クラフの場合、従業員の採用・育成の取り組みが高く評価されました。

クラフは、地方で未経験者を採用し、1人前のセキュリティエンジニアに育成する取り組みが最も評価されました。

キャリアを積んだ社員が受け皿となり、自らの知識・経験を組織に還元することで未経験の社員がキャリアを築く。こうして成長した社員が、今度は自らの知識・経験を組織に還元することで新たな社員がキャリアを築くことができる。このようなサイクルが生まれています。

一方、福利厚生やコミュニティ(地域社会など)への貢献なども評価される要素となりました。IT業界は非製造業であるため、業務における環境負荷に関する評価を定量的に測定し、具体的に改善への取り組みを行っている企業はまだまだ少数かもしれません。一方で製造業の場合、例えばアパレルメーカーなどでは、商品の製造自体の環境負荷が高いため、環境負荷を抑える取り組みへのモチベーションを高く設定しやすいかと考えられます。環境に配慮した製造プロセスや素材の使用などをアピールポイントとされている企業が多いようです。

ーB Corp認証を考える皆さんへメッセージを

村上:今すぐ取得を検討しているわけではなくても、Web上のポータルサイトB Impact Assessmentで質問に答えることで、企業の現状を把握できます。B Impact Assessmentはどなたでも始められますので、企業の取り組みやガバナンスを一度振り返って透明化してみる良い機会として活用してはいかがでしょうか。企業のセルフチェックにもなり、これからより社会貢献するための具体的なステップが見えるようになるはずです。

一方、日本において社会課題への取り組みを望む企業は増えているものの、認証取得に踏み出せていない企業が多い現状があります。

クラフでは、日本におけるB Corpの存在感を高め、他企業の後押しとなるよう、これからも事業を通じた社会貢献であらゆるステークホルダーへBenefitを生み出す取り組みを推進して参ります。