基本を大事にしないと、基本ができない人が集まる|Talk 前編|エストレジャー有限会社 大山氏
宮崎で不動産賃貸や運営管理を手掛ける、エストレジャー有限会社 社長の大山直樹氏。2014年には宮崎第一ホテルを買収し経営再建に乗り出すなど、宮崎を代表する若手経営者として注目を集めています。
今回は、同じ宮崎の地に居を構える、株式会社クラフ(KRAF)の代表取締役・藤崎氏との対談を通じて、大山氏がビジネスに取り組む上での想いや、これまでのエピソードについて伺いました(以下敬称略)。
ーまずは、エストレジャー有限会社の企業紹介をお願いできますか?
大山:エストレジャーでは、不動産賃貸業の運営管理とホテル業務を行っています。2014年には宮崎市内で運営している宮崎第一ホテルを買収して、ホテル経営に取り組んでいます。
藤崎:プロフィールを読ませていただいたのですが、大山さんが起業に至った経緯がとても特徴的ですね。
大山:はい。留学先のアイルランドでの体験がベースとなっています。
藤崎:どうしてアイルランドを留学先に選ばれたのですか?
大山:アメリカやイギリスであれば、チャンスがあれば比較的いつでも訪れることができます。留学した当時は31歳でしたが、人生の見聞を広めるという意味でも、なかなか行けない場所を選んでみようと考え、アイルランドに留学しました。
藤崎:そこで、起業のきっかけとなるシェアハウスとの出会いを果たすわけですね。
大山:はい。ある時、図書館の友達募集の掲示板を通じて、シェアハウスのオーナーさんと知り合う機会がありました。せっかくなのでとシェアハウスにお邪魔したら、築200年の素晴らしい建物でした。建物全体を蔦(つた)が覆い、とても雰囲気がある。門から玄関までは100メートル近くあり、庭にはテニスコートや芝生、それから原生林まで残っていました。
藤崎:建物の趣ある情景がありありと浮かんできますね。築200年とは、本当に驚きです。
大山:あまりの感動にさっそく入居を申し込み、3か月後に入居することができました。やはり人気があって、順番待ちの状態だったんですね。いざ入居してみると、本当に細かな部分まで行き届いている。敷地内はきれいに整備され、建物の中はほこり1つない。あるとき私が体調を崩して寝込んだときには、親身になってケアをしてくださいました。
入居者の方々との交流も素晴らしい経験でした。暖炉を囲んでティータイムを楽しんだり、レコードやピアノの演奏に耳を傾ける。
そのうちに「こんな感動的な体験を、自分も提供してみたい」という強い気持ちが湧いてきました。これが、いまの不動産業を志したきっかけですね。帰国後すぐに本屋に向かい、不動産の本を端から端まで購入して読み漁りました(笑)
藤崎:強い想いはもちろんですが、行動力が素晴らしいですね。はじめから大きな物件にアプローチしたのですか?
大山:はじめは小さな物件からスタートするつもりでしたが、大きな物件でないと銀行の融資が受けられないことが分かりました。なので、スタートから大きな物件にアプローチして、銀行の協力を受けることができました。
周囲からは心配や反対の声もたくさんありましたが、それでも「やるぞ!」という気持ち、それしかなかったですね。
藤崎:ちなみに、どのくらいの規模の物件だったのでしょうか?
大山:マンション一棟ですね。これはあとから振り返って気付いたことですが、チャレンジするなら大きくスタートしないといけないと感じました。宮崎第一ホテルを買収したときも、大きなリスクを背負うことで「失敗できない」という強い気持ちがエネルギーになりましたね。
藤崎:それはとても共感できますね。クラフも会社の年齢が若いということで、不安や心配の声をいただきました。ですが、かえってそれが力になりましたね。それ以外にも、心掛けていらっしゃることはありますか?
大山:建物によっては手が行き届いておらず、状態が悪いものも少なくありません。とくに事業をスタートした当初は、そういった部分がとても目につきました。そこで徹底したのが掃除ですね。現在のホテル経営でも、お客様の目につく場所はもちろん、従業員しか出入りしないバックヤードまで徹底して掃除することを教育しています。
つまるところ、基本大事にしないといけないということ。基本を疎かにしていると、そこに集める人も基本が成っていない人が集まってしまいます。自分が従業員を教育する際も、ノウハウやテクニックではなく、こうした基本を繰り返し、繰り返し伝えることを心掛けています。
藤崎:クラフでは『「安心」を提供する会社で在り続ける』という企業理念を掲げています。自分が社員のみなさんに話をする際も、この基本となる理念目的の部分だけを繰り返し話すようにしています。いまお話を伺う中で、大山さんも基本となる部分を徹底しているとお聞きできたのは、とても嬉しいですね。
アイルランドでの感動的な体験が、いまの不動産業の原点であると語ってくれた大山氏。その理想とするイメージを追い求めるには、「基本」の部分を徹底することが大切だと話します。
対談記事の後編では、ホテル経営の現場でどのように「基本」を徹底しているのか、その具体的なエピソードについて伺います。