医療もセキュリティも抱えている課題は同じ|Talk前編 |ジャパンハート佐藤抄事務局長

国内外で医療活動を行う(認定)特定非営利活動法人ジャパンハート(以下、ジャパンハート)の事務局長を務める佐藤氏(以下敬称略)。

先日クラフのオフィスを訪れ、それぞれの活動紹介やオフィス視察、クラフ代表の藤崎との対談に臨まれました。Talk前編では、両者の活動についてや医療とセキュリティそれぞれの社会課題について話しました。

ー「届かないところに届ける」活動について

藤崎:ジャパンハートといえば、国内外で医療活動を行っていることで知られていますよね。改めて、現在の活動について教えていただけますか。

佐藤:私たち(ジャパンハート)は、「すべての人が生まれてきて良かったと思える世界を実現する」をビジョンに掲げて活動しています。”すべての人”といっても、多くの人に一括で幸せを与えるのではなくて、1人1人の人生を豊かにしていく、自分も豊かになる、その積み重ねですべての人を幸せにできたらと思っています。

そのためには様々な方法がありますが、私たちは医療という方法で幸せを届けています。私たちが考える”医療”は、病気やケガを治療するだけではありません。家族や生活を含めて良くしていくために何ができるかを考えています。

例えば、治療困難な病気の場合でも、本人や家族の生活をより良くするために、ジャパンハートの医師や看護師が付き添うことで旅行や外出のサポートをしたり思い出作りに写真を撮ったり、そのような活動もあります。

現在、海外ではミャンマー、カンボジア、ラオスなど東南アジア諸国を対象に、年間約2.5万件の治療を行っています。日本のように国民皆保険制度がないため、お金がなくて治療を諦める人もいる。だから私たちは無償で医療を提供しています。

今までは、感染症や下痢など日本であれば軽症で済む病気で命を落とす人も多くベーシックな医療が中心でしたが、最近では小児がんなど高度な医療を必要とする人々も多くいます。高度な治療になってくると、技術者を現地に送ったり、かなりのコストをかけたり、希少性が出てきます。国内外ともにこうした高度な医療の提供も継続してきたことを評価いただいています。

ー現在の医療・セキュリティにおける課題について

藤崎:国内外問わず広く、また継続的に活動されている中で、現在の医療における課題はどのようなところだと思われますか?

佐藤:アフリカや南アジア、そして私たちが活動している東南アジアの低所得国など、世界には医療が届いていない地域がいくつかあります。そうした地域を中心に、世界では5歳未満の子どもが毎年500万人なくなっており、そのおよそ半数は生まれてから28日以内に亡くなっているのです。

どのような理由で医療が届いていないのか、私は4つあると考えています。

1つめは、医療者が足りないこと。病院があっても医師が足りずに治療を受けられない場合も多くあります。人口1000人あたりの医師数が、日本では2.5人いる計算になっていますが、カンボジアでは0.2人しかいない状況です。さらにカンボジア内でも首都圏に集中しているので、地方では一層の医師不足が続いています。

2つめは、薬や必要な医療器材が手に入らないこと。病院がない地域もあります。このように物資が足りないという理由で医療サービスが提供できていないことも課題です。

3つめは、技術が追いついていないこと。できる治療の幅が中高所得国に比べて狭く、必要な治療が施せないことも多くあります。

4つめは経済的な理由。先ほどお話したとおり、日本には国民皆保険制度がありますが、低所得国ではお金があれば治療が受けられるのに、お金が払えないから諦めるというケースが多発しています。中高所得国と低所得国の間のギャップは現在も埋まっていないですね。

藤崎:経済的理由に加え、医師が足りないという”人”の不足、薬が手に入らなかったりできる治療が限られていたりする”技術”の不足などによって必要な医療サービスが届いていないという現状ですね。

セキュリティにおいても、IPAがお金・人・技術の不足でセキュリティ格差が生じているというデータを発表したように、同じ課題があるといえます。

そうした課題を解決しようと、クラフでは、NPO法人や中小企業に無償でセキュリティサービスを提供するS4を去年9月にリリースしました。

また、これまでに高度な知識やノウハウが必要とされてきたセキュリティ診断の業務を標準化・仕組み化してシステムに落とし込むことで、IT未経験者でもセキュリティ診断ができるようにし、実際に創業から約5年で150名ほどの異業種出身の社員が活躍しています。これにより、専門知識がなくてもIT業界に転身できるよう窓口を広げたほか、慢性的な人材不足が続いていたセキュリティ業界で、供給を大幅に増やすことができました。

このように、分野は違えど同じ課題がある医療とセキュリティの業界において、私たちは「届いていない人々に届ける」活動を行っているといえるのではないでしょうか。

ー社会課題の解決に向け、より推進力をあげていく

佐藤:国連やWHOが目標として掲げているのが、「すべての人が基本的な医療サービスを適切な価格で受けられる世界を作る」です。

世の中には困っている人がまだまだたくさんいて、基本的にはその課題はなくならないと私は思っています。ではどうアプローチするか、ということになりますが、自ら動いて困っている人たちのもとへ届ける活動をする人たちを増やしていくことが必要です。

今は医療が届いていないところへ日本の医療従事者に動いてもらって、カンボジアへ医療サービスを届けにいき、お金がない人たちに向けて無償で提供しています。その輪を広げていくことに尽きるのではないでしょうか。

藤崎:セキュリティもまさに同じです。届けたい人たちに届けていく輪をできるだけ大きくするために私は株式会社という形を選びましたが、目標にしているところは共通しています。

一方で、セキュリティの格差解消に向け発足したS4プロジェクトに先駆けて行ったクラウドファンディングは失敗に終わりました。伝え方の不足もあったかもしれませんが、みんなで手を取り合って主体的に社会課題の解決に寄与していこうという機運は、少なくとも日本においてはまだまだ発展途上だとも感じます。医療においてはどうですか?

佐藤:私は2011年にジャパンハートに加わりました。時代の変化は強く感じますね。日本の寄付市場は経済規模に対して著しく小さいとは言われていますが、日本の中でも東日本大震災をきっかけに、寄付をする人が増えました。

生き方として社会課題への貢献を望む人も増えています。給与をあげるというような条件面での動機ではなく、社会を良くしたいという動機で活動に加わる人が増えてきているという印象を受けます。寄付も現地での医療活動も、役割が違うだけで「社会を良くするために」していることという点では同じではないでしょうか。

昨今注目されているSDGsも追い風となり時代とともに変わってきてはいますが、より社会を良くすることを1人1人が考え、貧富の格差などの不均衡に対し当たり前に動ける社会を目指していきたいです。

藤崎:私たちの活動はもちろん、分野を問わず「社会をより良くするために」という意思を持った活動の輪が広がるよう共に頑張っていきたいですね。

医療とセキュリティ、分野を超えて共に「届かないところに届ける」活動を続けるジャパンハートとクラフ。活動の理念や課題に感じている点など共通項も多くありました。

Talk後編では、ジャパンハートとクラフの接点のきっかけとなった取り組みや、今後について話します。

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